研究テーマ

基礎研究

 

網膜色素上皮(RPE)細胞を用いた加齢黄斑変性の発症メカニズムと新規治療標的の探索

 
加齢黄斑変性(AMD)の病態を解明し、新たな治療法を開発するため、各種の培養網膜色素上皮(RPE)細胞を用いた基礎研究を行っています。

iPS-RPE細胞を用いたメラニン産生異常のメカニズム解明

AMDの初期病変として、RPE細胞の色素異常(脱失や色素むら)が知られていますが、その詳細なメカニズムは不明でした。従来のRPE細胞株(ARPE-19など)は生体と異なり色素を持たないため評価が困難でしたが、当グループでは色素を豊富に保持する「ヒトiPS細胞由来RPE(iPS-RPE)細胞」を用いることで、より生体に即した解析を実現しました。AMDの主要な危険因子である喫煙に含まれる毒性物質(ヒドロキノン:HQ)をiPS-RPE細胞に曝露した結果、曝露期間によって全く異なる色素異常が引き起こされることを見出しました。
これらの結果から、HQ曝露によるRPE細胞の「色素脱失(脈絡膜への光障害)」と「色素過剰(青色光照射に伴うVEGF分泌)」という不均一な色素異常が、滲出型AMDの発症に深く関与していることを明らかにしました1。
また、AMDに関わるその他の要因についても網羅的な解析を行っています。
酸化・糖化ストレスとスタチンの効果:HQによる酸化ストレスと、加齢で蓄積する終末糖化産物(AGE)が同時に作用すると、AGE受容体(RAGE)や転写因子SP1を介してVEGF-A産生が強く誘導されます。一方、高コレステロール血症治療薬であるスタチンが、転写レベルでRAGE発現を抑え、VEGF-Aの分泌を抑制することを見出しており、新たなAMD予防薬としての可能性を示しています2。

アミロイドβ(Aβ)の影響

ドルーゼンの構成成分であるAβがRPE細胞に与える影響は濃度依存的であり、低濃度では細胞保護因子(PEDF)の分泌を促して細胞死を防ぎますが、高濃度ではカスパーゼ9経路を介したアポトーシスと、RAGE経路を介したVEGF-Aの転写亢進を引き起こすことを明らかにしました3。
これらの基礎研究の成果を通じて、喫煙、酸化ストレスや加齢に伴う変化(AGE、Aβ)がRPE細胞の機能や色素産生に異常をきたし、VEGF産生に至る分子機構を解明することで、AMDの病態理解と新規治療標的の創出を目指しています。

参考文献

1. Nishiyama T, Tsujinaka H, Ueda T, Ogata N. Alteration in melanin content in retinal pigment epithelial cells upon hydroquinone exposure. Int J Mol Sci. 2023;24(23):16801.
2. Tsujinaka H, Itaya-Hironaka A, Yamauchi A, Sakuramoto-Tsuchida S, Shobatake R, Takasawa S, et al. Statins decrease vascular epithelial growth factor expression via down-regulation of receptor for advanced glycation end-products. Heliyon. 2017;3(9):e00401.
3. Masuda N, Tsujinaka H, Hirai H, Yamashita M, Ueda T, Ogata N. Effects of concentration of amyloid β (Aβ) on viability of cultured retinal pigment epithelial cells. BMC Ophthalmol. 2019;19(1):70.
 
研究テーマ
  • 新人入局員募集
  • お問い合わせ